雑草のない世界は荒野だ。
一軒家のウチには小さな庭がある。ぼくはここを小自然と呼んでいる。
庭の一部をこれまた小さな畑にしてるのだけど、次第に耕さなくなった。だって生きものが土の中に眠ってるんだもん。カナブンか何かの幼虫とか。掘ったら冬眠中のカエルが出てきたときはびっくりした。ぼくは小さな生きものをできるだけ殺さないようにしている。洗濯物にくっついてたのか、アシナガバチが台所で飛んでたときは捕獲して外に出してやった。あ、アシナガバチは滅多に人を刺さないし益虫なので共存しましょう。そんなわけで畑は耕さず、鍬とかスコップとかできるだけ使わず。それに雑草もあまり抜かなくなった。だって生きものがそこにいるんだもん。邪魔にならない程度にほったらかし。
んで、ある時、庭の雑草を見てて思った。
雑草のない世界は荒野だ。
雑草があるから野生の生きものがそこで暮らす。田舎は雑草だらけで、雑草のある世界には昆虫からカエルから、イモリだかヤモリだかから、鳥も、野良猫も、いろんな生き物が生を全うする。だから雑草のある世界は豊かだし、たくさんの生き物で賑やかだ。音はあんまりしないから静かだけど、生命がたくさんって意味で賑やかだ。
アスファルトで地面を覆っている都会は荒野だ。生命が(あまり)いないから死の世界ですらない。
ぼくはそんなとこで生きたくない。
たくさんの生きものが暮らすこの小自然の空間が好きだ。毎朝、メダカや畑や鉢植えの世話で庭に出る。池に落ちた虫(なんであいつらよく落ちる)を拾ってやったりする。それがぼくの力になる。