転がる石はまろくなる。

オンボロと小自然と。

おっさんの完全な休日。

金曜の帰り、JR有楽町駅の混雑は尋常じゃなかった。ホームが一杯で階段でしばらく立ち往生、やっとホームに出てもやってきた京浜東北線には乗れず、次の山手線にも乗れず、さらにまた次の京浜東北線にはなんとか乗れたが、ぎゅうぎゅう詰めでなかなか扉が閉じられず。隣の東京駅までの間、死ぬかと思った。

混雑では、人間の本性が出る。こんにゃろーと思った。

そのせいなのかどうなのか、土曜の朝、やけに疲れていた。表現しにくいが、心身ともにどうにも駄目な状態だったので、予定を変更、一日ゆっくりと休むことにした。ちゃんと休むのも仕事のうち、と、プロのアスリートなら考えるかもしれないが、僕は人生を仕事に捧げているわけではなく、逆に、休みに好きなことをするために働いているので、休むときには休みたいし、好きなことをしたい。

雲ひとつない晴天だったので、そうだ風呂に行こうと、タオルや着替えを持って車で出かけた。近所のお気に入りの入浴施設が、最近経営が変わってリニューアルオープンしたので、行ってみることにする。チラシも入ってたし、混んでるかもしれないけど。

行ってみたら、案外空いてた。というか、ガラガラだった。お昼時だったからかな、露天風呂に他に誰もいなかった時も。のんびりできるのはいいんだが、経営が心配だ。ともかく、いつものお気に入りのとこに。奥まった、ぬる湯の一角で、わりと人気の場所だから、なかなか空かないこともあるんだが、今日はばっちり。青空を眺めながら、ゆっくりとできた。

昼飯どうしようか。天ぷらが食べたいなあと思った。揚げたての天ぷらがいいなあ。

風呂を出て、一階の食堂に行った。お、メニューに天ぷらがある。天ざるそばと、ノンアルを頼み、窓際の席でさんさんと陽に当たりながら料理を待つ。

すぐにブザーが鳴って呼ばれたので、作りおきの天ぷらかと一瞬がっかりしたが、予想を裏切って、なんと揚げたてだった。うまい。さくさくの天ぷらをいただきながら、ノンアルを飲む。クラフトビールがあったんだが。。。

揚げたての天ぷらだけで、うれしくなる。そばの方は残念ながらというか案の定というか、大したことはなかった。

食後、横になってしばらく休んでいたが、そばのアカスリ受付でずっと話し続けている男の無神経な大声が気になったので、さっさと出た。人生なんて適当でいいんだよー、などと笑顔で受付の女性に話している、四十がらみの男。酔ってるのかも知れないが、そんなとこで人生語るな。

陽気のなかを車でしばらく走り、田園風景のなかに建つ、なじみのカフェに行く。物静かな年配のご夫婦が営む、こじんまりとして、ゆっくりできるカフェだ。すっかり冬景色になった庭を眺めながら、コーヒーをいただく。いつも通りにおいしかった。会計を済ませ、いつものように庭を散策する。庭には木のベンチがあって、正面に太陽がある。太陽を見上げる景色が、僕は好きだ。

カフェの近くに最近出来た魚屋さんに行く。自宅の庭に建てたお店に入り、二点盛りの刺身を買う。ご主人がひとりで切り盛りをしている、小さな魚屋だ。並べられた刺身の点数も少ないが、なにか、いい意味で今っぽいなと思う。以前だったら、個人商店も目一杯の拡大指向で勝負、みたいな感じもありだったのだろうが、そうではなく、身の丈経営というか、無理をしてないところが好ましい。よりどりみどりをするなら大型スーパーに行けばいい。ひとつひとつが丁寧に作られた、数少ない商品のなかから、今日はどれにしようかなと選ぶのも悪くない。ぼくはできるだけ、個人や家族で経営するお店でお金を使うようにしている。ぼくが出したお金が、誰だかわからない巨大資本にばかり吸い取られるのは嫌だ。目の前で接客してくれる、感じのいいご主人に、お礼の意味も込めて支払いたい。

途中でスーパーに寄って、おいしいクラフトビールを買い込んで帰宅。日没前から、さっき買った刺身を肴に、ビールを飲みはじめる。

今日はいい日だった。

これが僕の、完全な休日の過ごし方。