転がる石はまろくなる。

オンボロと小自然と。

晩秋のちんまりとした休日。

おとといの土曜日。風もなく、ぬくぬくとした穏やかな日。
今日はちんまり過ごそうと決めた。
午前中は庭で。ずいぶん前に買った九条細ネギのポット2つを畑に定植する。根をできるだけ切らずに1本づつ分けるのが大変で長らく放置していた。水につけ、少しづつ土を、根をバラしていく。1時間ぐらいかかっただろうか。それを畑に一列に並べて土をかけ、ワラでマルチングをする。
庭のメダカはそろそろエサやりを控える時期だが、今日は水温10度ぐらいと高く、水面を元気に泳いでいたのでエサをやったらわりと食べた。池の水温は最高気温ではなく最低気温にリンクする。来週は最低気温がぐっと下がる予報になっているから、そうするとメダカはエサを食べなくなり、春先まで底にかくれてじっと過ごすようになる。ぼくにとってはそれが冬の到来。秋は実質今日までかな。
昼になり車で出かける。ちんまりと食べられるのはどこかなと考えて、市内のそば屋にした。そばがおいしい店だけど、うどんもある。ちんまりとうどんを食べよう。2時のオーダーストップに近い時間に入ったのだが、店内には意外とお客さんが何組もいた。座った席はまだ片付けの途中だったらしく、おばさんが机を消毒液で拭きながら、消毒なんて嫌な時代だねえと言う。そうですねえと答える。
たぬきうどんを注文してしばらく待っているうちに、あれ、たぬきそばって言わなかったかなあと思い始めた。時々、心に考えていることと、口に出すことが違うことがある。以前、人にコピーを頼んだときA4と言ったつもりがA3と言ったらしくA3コピーが出てきてびっくりしたことがある。無事にたぬきうどんが来て、ほっとした。
天かすが好きで、丸亀製麺などではセルフのネギと天かすを山盛りにして食べるのが常なのだが、ここのたぬきは天かすが別皿でついててうれしい。パリパリの天かすが食べられる。最初にちょっと天かすをかけてレンゲですくって食べる。うまい。うどんもうまい。さらにサービスで野菜の天ぷらを3つつけてくれた。うれしい。天ぷらをつゆにつけて食べる。うまい。こういうささやかなうまさで僕は日々生かされているから、飲食店従業員の皆さんには感謝しかない。
そば屋を出て、隣町の魚屋に行く。自宅奥の小屋にご主人ひとりで切り盛りしている、小さな魚屋だ。珍しく先客がいて、狭い店内が賑わっている。おさかなのマリネをまず手にとり、めひかりの干物も買い、刺身も3点買う。
いったん自宅に戻って買った品を冷蔵庫に入れ、ふたたび車で小さな喫茶店へ。特等席の窓際には座れなかったが、窓の外が眺められる席に案内された。外は森の中のような景色。コーヒーが何種類かあるうち、モカと迷った挙句キリマンジャロを頼む。この店は83度でコーヒーを淹れると以前聞いた。落ち着いた味だ。
それからスーパーの駐車場に車を停め、向かいの焼き鳥屋さんで焼き鳥を5点注文する。ここは高齢のおばさんが一人で営んでいる、焼だんごと焼き鳥の小さな店だ。スーパーで酒を買い、焼き鳥をとりにいったら、わたし注文を間違えたかしらとおばさんが不安そうにしていた。大丈夫です、頼んだのはこの5点で、塩味ですと言うとほっとしていた。歳をとると、そういうこともあります。
日没とともに帰宅、買ったばかりの焼き鳥と、おさかなのマリネでテレビのバラエティ再放送を見ながら一人飲みをはじめる。
歳をとり、若い頃のように放っといても年中元気というわけにはいかなくなった。体調の維持はもちろんだが、メンタルの維持が大事な年頃。こじんまりと、心を激しく動かさずに過ごせた一日だった。